ED治療薬

バイアグラは、日本においても抜群の知名度を誇り、おそらく知らない人はいないのではと思えるほど有名な勃起不全(ED)治療薬です。
アメリカでの発売に遅れること1年後の1999年1月に厚生省(当時)より承認を得て、3月末よりファイザーから医療機関向けとして発売されています。

バイアグラは元々 狭心症の治療薬として研究が進んでいました。
しかし、臨床試験が行われていたものの、効果が予想より悪く試験は中止されました。
ところが試験に参加していた一部の者が、試験が中止となったにも関わらず試験薬を返さないといった事態が起きました。

理由は試験薬の服用により、陰茎の勃起が促されたためです。
そのことが判明し、後に、勃起不全治療薬として売り出されました。

アメリカで発売される前後には日本のマスコミにも大々的に取り上げられ「画期的新薬」ともてはやされる状態になり、個人輸入代行業者によって日本にも入ることになりました。
バイアグラを使用するのは中年以降が大半で、個人輸入で入手したためにバイアグラの併用禁忌薬として硝酸塩薬が掲げられていることを知らない患者が硝酸塩薬(ニトログリセリンなど)とバイアグラを服用して性行為を行い、心停止となって死亡するといった事故が頻発しました。
この副作用による死亡事例を重く見た厚生省は臨床試験をせず、アメリカでの承認データを使用することでスピード審査を行い承認したのでした。

日本国内では25mgと50mgが承認されて発売されていますが、100mgは承認されていないため海外のみでの販売となっています。
つまりバイアグラの100mgは国内正規品ではないということです。

日本で正規に入手するためには医師の処方箋が必要です。
ただし健康保険の適用が無いため自由診療となっており、各医療機関で価格設定が行えますが、おおむね1錠1500円程度のようです。
当初は泌尿器科や一般内科の医師のうち専門知識を習得した者によって、問診のほか生理的検査を行いEDであると診断された場合のみ処方されていました。

なおよくある誤解に、生理的検査の際に陰茎を医師に診せたり触診されるのではないかと言った声がよくありましたが、血圧測定程度しか実際には行うことはありません。

近年では美容外科や心療内科など扱う病院が増えており、問診だけで処方されるなど処方箋薬のはずが簡単に処方されるケースが増えています。

バイアグラは1日1回1錠の服用で過剰摂取は絶対ダメです。
日本人の体格を考慮して、厚生省の認可は25mgまたは50mgの2種だけで100mgは認可されていません。
ご自身の体格に合った服用量を厳守してください。
海外ではバイアグラを過剰摂取したことによる死亡事例も報告されています。

そして1度服用すると次の服用までは24時間空けることが必要ですし、この時間内に他のED治療薬を摂取することも避けなければいけません。

バイアグラのその効果を実感できる時間は3〜5時間と言われていますが、その時間を経過後も血液中にはまだ成分が残っています。
この効果は無いのですが血中濃度がまだ高い状態の時にバイアグラや他のED治療薬を服用すると、薬の成分がより多く血液中に溶け出すことになり血中濃度が既定値を超えることになります。
この場合には重篤な副作用が予想されるなど危険な状態になる場合もありますので、24時間の服用間隔は厳守してください。

バイアグラの使用方法で最も重要なのは、その飲みかたとタイミングです。
バイアグラは服用後30分〜1時間後に最も効果を発揮し、持続時間は3〜5時間程度です。
このため性交の30分〜1時間前に服用すれば効果を実感できるのです。

ただしこれにも条件があります。
バイアグラは食事に大変影響されるお薬で、空腹のときに服用すれば吸収率が上がるので、その効果を実感できることになります。

食後すぐの満腹時に服用するとどうなるのでしょうか。
胃の中にはまだ食事したものが残っているので、これらの物とバイアグラが混ざり合うことになります。
こうなると吸収率が極端に落ちることになりますから、効果が表れるまで時間が掛かるばかりか、効果が半減することにもなります。
バイアグラを服用してもあまり効果が無かった、という人のほとんどはこの食事との関係が指摘されています。

なので食事の30〜40分ほど前にバイアグラを服用し、体に十分吸収した後に食事をすることでバイアグラの効果を十分を発揮することができます。

ただ実際には食後にバイアグラを服用することが多いかもしれません。
この場合にはあっさりとした食事で腹七分くらいにとどめておきます。
そして食後1〜2時間経過してから服用すると良いでしょう。

脂っこいものは胃壁や腸壁に油膜を作ることになり、バイアグラの成分を極端に吸収しにくくしますので避けます。
適度なアルコールはリラックス効果があり良いのですが、バイアグラの服用で酔いが回りやすくなりますから酒量には注意が必要です。

本来は、狭心症の治療を目的に研究されていたバイアグラ。
一般的に狭心症とは血管内にコレステロールなどの塊ができて、血流の状態を悪くすることによっておこる病気です。
この血流改善を目指していた時に偶然発見されたのが、勃起の促進や持続時間を長くするという効果でした。

まず勃起の仕組みですが、性的な興奮を自律神経を介して脳から陰茎に伝えられると同時に、体内には一酸化窒素が出されます。
一酸化窒素が陰茎の海綿体の血管細胞に放出されると、GMP(サイクリックグアノシン1リン酸)という物質が作り出されます。
このGMPには動脈を広げ血液の流れをよくする働きがあり、陰茎の海綿体にも血液が流れ込み勃起します。
これに対して海綿体内には豊富にPDE5(ホスホジエステラーゼ5)という酵素が存在しています。
PDE5はGMPを取り込んで中和する働きがあり、興奮状態が続きGMPの放出が続き中和する量より多ければ勃起し続けますし、興奮が収まりGMPの放出が減少していくと中和される量の方が多くなり勃起がおさまります。

このPDE5の働きを邪魔すれば勃起しやすくなることがお分かりいただけると思いますが、バイアグラがその働きをするのです。
バイアグラに含まれている有効成分が、PDE5の働きを阻害するためにPDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬と呼ばれています。

よくバイアグラを服用するとずっと勃起し続けるのでは、という誤解を持たれている方が多いようですが、勃起するためには性的興奮を自律神経を介して陰茎に伝える必要があります。
伝えられなければ勃起を促す物質であるGMPを作り出しません。
バイアグラを服用しPDE-5の働きを抑制したところで、GMPが生産されていないのでは勃起は起こりません。

勃起した場合にはPDE5を阻害する働きによって持続しますが、性的興奮がおさまりGMPの放出が減少すれば勃起はおさまることになります。

バイアグラは勃起の邪魔をするPDE5を阻害する役割のお薬であって、精力剤や媚薬のような性的興奮を増大させる成分は入っていません。
このように、薬個人輸入からバイアグラを服用したからと言って、ずっと勃起し続けることはありませんのでご安心を。

バイアグラの有効成分は クエン酸シルデナフィルという物質です。
バイアグラの25mgにはこの成分が25mg含まれており、バイアグラ50mgには59mg含まれています。

この有効成分にはPDE5の働きを阻害する役割があって、これによりEDを治療しようとするわけです。

従来PDE5は陰茎の海綿体に多く存在することが知らていたが、肺動脈平滑筋にも多く存在していることが知られていました。
肺動脈平滑筋のあるPDE5が、平滑筋弛緩作用を持つGMPの分解を促すことが肺高血圧症の原因であることが近年分かったのです。
この肺高血圧症とは肺動脈の血圧の上昇を認める病の総称で、日本での患者数は約6000人と推定されています。

ED治療薬以外にも、その用途を広げ20mgのクエン酸シルデナフィルを含んだ「レバチオ錠20mg」は、肺高血圧症の治療薬として厚労省に認可され発売されています。

バイアグラには、どのような副作用があるのかを見ていきましょう。

狭心症用の治療薬として開発を進めてきた経緯からも分かるように、血管を拡張させることによって血流量を上げて血圧低下を促す作用があります。
血流が良くなることによって顔がほてったり、目が充血したりします。
これらの副作用は、バイアグラを服用した大半の方が経験するものです。
バイアグラが効果を発揮し始めた合図だと思える程度の軽度なものですから、特に心配する必要はありません。

また頭痛や動悸、そして鼻づまりなども副作用としてよく出現します。
頭痛がひどい場合には、市販の痛み止めを服用しても問題はありません。
なおこれらの副作用は、バイアグラが効果を発揮している3〜5時間を過ぎると自然と治まります。

重篤な副作用としては、血圧の急激で大幅な低下があります。
通常の使用量であれば問題が起こることはかなり少ないのですが、短時間内での摂取や過剰摂取を行った場合には危険性がかなり高まります。
過剰摂取により心臓への酸素供給に問題が起こり狭心発作を起こすことがあります。
救急搬送された医療機関では治療として硝酸塩系薬剤を投与しますが、硝酸塩系薬剤にはバイアグラと同じく血圧低下作用がありますので、バイアグラを使用したことを告知せずにいると硝酸塩系薬剤の作用によって血圧が下がりすぎて最悪の場合、死亡する危険性が高まります。

また持続勃起症(プリアピズム)を発症する場合があります。
4時間以上の痛みを伴う勃起が続いた場合には、直ちに受診してください。
陰茎組織が損傷したり、場合によっては勃起機能を完全に喪失することがあります。

アメリカ食品医薬品局(FDA)は2007年に突発性難聴になる恐れがあるとED治療薬製造各社に警告し、ラベルや使用上の注意書きにそのリスクを詳しく記載するよう求めています。

主な成分であるクエン酸シルデナフィルには血管拡張作用があります。
元々、狭心症用治療薬を開発する際の副産物的にできたものが、世界初のED治療薬となったためです。

狭心症の治療に現在でも広く使われている「硝酸塩系薬剤ニトログリセリン」にも血管を拡張する作用があります。
血管内にコレステロールなどによる固まり(プラーク)ができることで血流が悪くなります。
これをニトログリセリンの血管拡張作用によって血液をスムースに流れるようにするのですが、血液がスムースに流れれば血圧が低下します。
実はバイアグラの主成分であるクエン酸シルデナフィルを服用しても同じように血圧が低下します。

このため、硝酸塩系薬剤と併用すると血圧が短時間のうちに極端な下がり方を示す場合があり、生命にかかわる悪影響を及ぼす場合があるのです。

併用禁忌薬に指定されている硝酸薬は次の通りです。
<ニトログリセリン>
・ニトログリセリン
・ニトロペン
・ニトロダーム
・ミリステープ
・ミオコールスプレー

<硝酸イソソルビド>
・ニトロール
・フランドル

<一硝酸イソソルビド>
・アイトロール
・シグマート(ニコランジル)
・ハイパジールコーワ(ニプラジロール)
・ニトプロ(ニトロプルシド)

<亜硝酸アミル>
・亜硝酸アミル

また肺高血圧症の治療薬であるアデムパス錠も併用禁忌薬です。
アデムパス錠とシルデナフィルを併用すると血圧が下がりすぎるためです。

重い不整脈の治療に用いるアミオダロン塩酸塩も併用禁忌薬です。
併用すると新たな不整脈が表れるなど重い副作用が出やすくなります。
・アンカロン錠
・アミオダロン塩酸塩錠

ここまでに掲げた薬を服用している方は、バイアグラと併用することで過度な血圧低下など生命に危険を及ぼす危険性がありますので、服用はお避け下さい。

バイアグラの保管方法ですが、特に神経質になる必要はありません。
直射日光が当たる場所や、湿度が高い場所でなければ問題ありません。
基本的に常温での保管でOKです。
よく薬を冷蔵庫に入れて保管する方がいますが、そういった必要はありません。

バイアグラは主成分の分量ごとに25mg、50mgが日本国内では発売されており、100mgは海外のみで発売されています。
成分の量が倍になったとしても、バイアグラの価格は1〜2割ほど高くなる程度です。
そこでバイアグラをピルカッターなどで、1錠を半分や1/4に割った場合は少し注意が必要となります。

バイアグラは表面を青色のコーティングによって覆うことで、湿気から守る役目をしています。
ところが半分や1/4に割ることで、白く見える切断面にはコーティングがされていない状態となります。

白く露出した部分は湿気を吸いやすくなって、その影響でポロポロと崩れていき形が壊れ、粉末状になってしまうことがあります。
割った錠剤を保管する場合はラップなどで包み湿気を吸わないようにして、ピルケースなど密閉された容器で保管することをお勧めします。

なお、粉末状に崩れるような状態になっても、バイアグラの効果自体には特に影響はありません。
しかし、割った錠剤はできるだけ早く服用するほうが良いでしょう。
よく言われる目安としては、1〜2週間以内に服用すれば問題はないと言われています。

バイアグラは世界でもっとも有名なED治療薬です。 それゆえに世界中に偽物が蔓延しているのも事実です。
テレビなどでも放映されていましたが、偽物のバイアグラを製造している国は中国、北朝鮮などのアジア地域から中東のアフガニスタンと言った国々で製造されていることが確認されています。
コピー品には、バイアグラと同様の成分が配合されていますが、偽物ではその主成分の配合が無い物もあり、劣悪な環境で製造されていることや、人体に悪影響を及ぼすものが含まれているなど、服用すると重大な人体被害につながるそんな危険な偽物も流通しているので注意が必要です。
こういった偽物を掴まされないようにするには、国内の医療機関で正規品を買うのが最も安全ですが、信頼できる個人輸入代行業者を利用するのも良いでしょう。

バイアグラには併用禁忌薬がありますので、絶対に併用しないように注意しましょう。
またバイアグラには少なからず副作用もありますので、それを理解したうえで服用しましょう。

併用禁忌薬や副作用ではありませんが、バイアグラを服用する際に気を付ける方が良い医薬品がいくつかあります。
最も多いのは、高血圧の患者で降圧剤を服用している場合です。
降圧剤は文字通り、高くなりすぎた血圧を下げるための薬ですが、バイアグラにも血圧を下げる効果があります。
なので降圧剤と併用となる場合には、血圧の低下のしすぎに注意が必要です。

その他にも併用するにあたって注意した方が良い薬がありますので、バイアグラを使用する前には医師と相談したほうが良いでしょう。

中にはバイアグラを服用できない人もいます。
バイアグラの成分に対してアレルギーを起こしたことがある。
心筋梗塞や動脈硬化など心血管に問題があり、性行為を行うこと自体に問題がある。
重度の肝機能障害。
上が90mmhg未満、下が50mmhg未満の低血圧。
上が170mmhg以上、下が100mmhg以上の高血圧で、治療による管理がなされていない。
最近6か月以内に脳梗塞、脳出血や心筋梗塞と診断された。
網膜色素変性症
以上のうち一つでも該当する場合、バイアグラの使用はできません。

中高年になると、バイアグラを使ってみようかと考える人が多くなってきますね。
そこで気になるのがバイアグラの安全性です。

バイアグラの主成分であるクエン酸シルデナフィルは、勃起の妨げとなるPDE5という酵素を阻害するお薬で、PDE5阻害薬と呼ばれています。
また元々は狭心症の治療薬として研究していたいきさつからも分かるように、血管を拡張させて血流量を増加させる働きがあり、この作用によって陰茎の海綿体に血液を集まりやすくさせることによって、勃起を促す働きがあるのです。

この作用を用いて、20mgが含まれている「レバチオ」という名前の薬が発売されており、こちらは肺動脈性高血圧症の治療薬として発売されています。

世界で初のED治療薬バイアグラに含有されている成分クエン酸シルデナフィルに対する臨床試験は世界各国で行われており、あらゆるデータにおいて安全性が確かめられています。
例えば糖尿病に伴う勃起不全患者に対する臨床試験においても、この成分の効果が確認されるとともに、体に変調をきたすと言ったことが無いことも確認されています。
同じく脊髄損傷に伴う勃起不全患者に対する臨床試験でも、同じ結果が得られています。

一部では心臓への負担について言われていますが、バイアグラ自体は心臓への負担はほとんどなく、心臓病や不整脈などを患っている場合を除いて心配はいりません。。
これらの心臓の病気を有している場合には、医師と相談したうえで服用してください。

また併用禁忌薬がありますので、現在使用している薬との飲み合わせについては気に留める必要があります。

バイアグラを安全に使用できるかの目安に、息を切らすことなく3階まで階段を昇れるか、満員電車に乗っての通勤が毎日できるのかと言ったものがあります。
これらを難なくできる体であれば、バイアグラを安全に服用できる体であると思っていただいて大丈夫です。