シアリス

シアリスは現在日本で承認されているED治療薬としては最も新しいお薬です。
2002年に海外で発売され、日本での承認は2007年7月です。
シアリスは5mg、10mg、20mgが発売されていますが、薬価基準に未収載ですので自由診療のお薬で、医療機関によって価格が若干違います。
ただし処方箋薬ですので医師の処方箋が無ければ入手できませんが、実際には簡単な問診程度で入手できる医療機関が多いようです。
シアリスの特徴はその有効性が大変長く、シアリス20mgを服用した場合においては36時間の有効性が認められます。
金曜日の夜に服用すれば日曜日にお昼まで長時間有効な事からウィークエンドピルの愛称を持っています。
バイアグラやレビトラに比べると効き方がマイルドであり、長時間にわたりマイルドに効き続けると言った印象です。
ただし服用から効果発現までに3時間ほどかかるため、バイアグラやレビトラは全く性格が違うED治療薬と言えるでしょう。
またバイアグラやレビトラに比べて、食事に最も影響されにくいのも特徴の一つです。
このためにバイアグラやレビトラを使用する場合は、服用のタイミングも考えなければならず、また性行為も薬の効果がある時間内に終わらせる必要があるなど、薬に左右されることが多かったのも事実です。
シアリスは効果が持続する時間がかなり長く、他のED治療薬に比べ食事にも影響を受けにくいために、薬効に左右されることなく服用できる点が手軽で良いところでしょう。
このようにシアリスの性格は他のED治療薬と全く異なりますが、全世界で見ると2013年にはED治療薬のシェアとして42%を獲得する、最も人気のあるED治療薬であることが発表されています。

シアリスを始めて使用する場合、シアリス10mg錠の服用から始めるのが一般的です。
10mgでの効果を見極めたうえで、5mgに減らしたり20mgに増やしたりして使用するシアリスの用量を決めていきます。
シアリスを服用後に有効成分の血中濃度が最も高くなるまでに、治験では30分〜4時間と個人によって大きなばらつきが見られます。
一般的には性行為の3時間前に服用します。
食事の影響を受けにくいと言われていますが、やはり空腹時に服用する方が吸収率が良く、その効き目を実感できるようになるまでの時間も短く、またその効き方も空腹時に服用する方が良いようです。
食事の影響に関するデータがメーカーから出されており、800kcal以下の食事の場合は食後すぐの服用でも影響が出ないと言われています。
すき家の牛丼の中盛で695kcal、大盛だと845kcal。
吉野家の牛カルビ丼の小盛で554kcal、並盛が827kcal。
マクドナルドのビッグマックは530kcal。
ロイヤルホストのチーズINハンバーグ757kcal。
800kcalの食事というと、少し気にかけていれば問題ないと言ったところでしょうか。
それでも食後に服用するとなると、もう少しあっさりとした食事で腹7分目に抑えて、食後1〜2時間経過した胃が空になったころが良いでしょう。
しかし効果が長時間続くのがシアリスの最大の特徴ですから、食前の空腹時に水とともに服用するのが最も効果的です。

シアリスはバイアグラやレビトラとともにPDE5阻害薬と呼ばれています。
勃起の仕組みから見ていきます。
性的な刺激や興奮は自律神経を通して脳から陰茎に伝えられると同時に、体内には内皮細胞から一酸化窒素が放出されます。
一酸化窒素が陰茎の海綿体の血管細胞に放出されると、GMP(サイクリックグアノシン1リン酸)という物質が作り出されます。
GMPは平滑筋の弛緩と血管拡張させ血液の流れをよくする働きがあるため、陰茎の海綿体にも血液が流れ込むことで勃起します。
これに対して海綿体内には豊富にPDE5(ホスホジエステラーゼ5)という酵素が存在しています。
PDE5はGMPを取り込んで中和させたり破壊する働きがありますが、興奮状態が続きGMPの放出が続いて中和される量や破壊される量より放出量が多ければ勃起し続けます。
逆に興奮が収まってくると一酸化窒素も作り出されずにGMPの放出も減少していきます。
こうなると中和されたり破壊される量の方が多くなり勃起がおさまる、こういう仕組みとなっています。
性的刺激は一酸化窒素の放出により始まり、放出されることでGMPが作り出され勃起に至りますが、PDE5の働きが強いと勃起に至ることができません。
そこでシアリスのPDE5阻害薬としての働きによって、勃起に至るようサポートするわけです。
またシアリスには一酸化窒素の放出を促す作用もあり、また一部の研究では、血管内皮細胞が一酸化窒素を生み出す機能を取り戻すのではないかとも言われています。
これらのことにより結果的にGMPを増やす作用にもつながります。

シアリスの有効成分はタダラフィルです。
シアリス5mgにはタダラフィルが5mg含有していることを表しています。
このタダラフィルは作用効果時間が長いことが特徴で、血中濃度が最も高まるのは服用後の平均値で3時間、半減するのが平均値で14時間半です。
これはシアリスを服用時の効果が現れる時間と、ピーク時の半分程度の効果がある時間に相当しますので、いかにシアリスが長時間効果があるかが分かるデータだと言えます。
有効成分のタダラフィルはED治療薬以外にも、肺動脈性肺高血圧症の薬としてアドルシカという名前で販売されています。
肺動脈性肺高血圧症は肺動脈の血圧が異常に上昇する病気で、肺の毛細血管の内部がコレステロールなどの固まり(プラーク)によって狭まったり、血管自体が固くなって起こるものです。
肺動脈平滑筋にもPDE5が多く存在しており、勃起時と同じくGMPの分解を進めるために、PDE5阻害薬として実績のあるタダラフィルの投与によってPDE5の働きを阻害して血流を増やす目的があります。
バイアグラの有効成分であるシルデナフィルもレバチオという名称で肺動脈性肺高血圧症の治療薬として用いられていますが、こちらは日に3回の投与が必要ですが、アドルシカ(タダラフィル)は長い作用時間から1日1回の投与で済むといったメリットがあり注目されています。
EDと並び中高年男性の多くがかかる疾患に前立腺肥大症があります。
このタダラフィルはザルティアの名称で前立腺肥大に伴う排尿障害改善薬としても用いられています。
現在のところ作用機序ははっきりとしていませんが、前立腺や尿道の血行をよくすることで尿道の圧迫を緩和させ、排尿障害や残尿感を快方させます。
このようにタダラフィルには血管を拡張させて血流を良くしPDE5の働きを阻止する作用によって、いろいろな治療薬として幅広く使われているのです。

血管を拡張して血流を良くする効果があるため、これによる頭痛や顔の赤みやほてり、また消化不良などがよくある副作用です。
データによると、バイアグラを服用した人のうち半数近くで副作用を感じたのに対して、シアリスでは27%の人が上記の副作用を感じました。
またシアリス自体が効き目がマイルドであるため、バイアグラの副作用より軽いと感じる人が多いようです。
その他の副作用としては鼻づまり、筋肉や手足の痛みなどがあるようですが、いずれもがシアリスの効果半減期を過ぎると治まるようです。
また一過性の視覚異常が現れる場合があります。
まぶしく感じたり、周囲が青く見えたり、青と緑の区別がつかないといった異常です。
これらも一過性で特に心配はありませんが、服用後に車を運転される場合は注意する方が良いでしょう。
重大な副作用としては発疹やじんましん、顔面浮腫、はく奪性皮膚炎、スティーブジョンソン症候群といった過敏症がごくまれに発症することがあるようです。
こういった症状が現れた場合にはすぐにシアリスの服用を中止し、医師の診断を仰いでください。
持続勃起症(プリアピズム)を発症する場合があります。
4時間以上の痛みを伴う勃起が続いた場合には、直ちに受診してください。
陰茎組織が損傷したり、場合によっては勃起機能を完全に喪失することがあります。
ただ全般的には副作用が少ない安全な薬です。
用法や用量を守って服用しましょう。

シアリスとの飲み合わせの悪い薬、併用禁忌薬についてです。
シアリスは他のED治療薬に比べて併用禁忌薬は少ないです。
硝酸剤との併用は血圧を急激に低下させ、命にかかわる危険性を伴いますのでシアリスの使用は厳禁です。
アイトロール錠10mg/20mg(ニトラステープ)
アイスラール錠20mg(ニトルビン錠5)
アイロクール錠20mg(ニトロールRカプセル20mg)
亜硝酸アミル(ニトロール錠)
アパティアテープ(ニトロールスプレー)
アンタップ/R(ニトロール注5mg/50mg/100mg)
イソコロナールRカプセル(ニトログリセリン錠)
イソニトール錠20(ニトログリセリン注-ACC)
イソピット(ニトロシンパフ)
イソモニット錠20mg(ニトロスロー錠)
イブステン錠5(ニトロダームTTS)
エスタット錠5mg(ニトロバイド錠5mg)
L-オーネスゲン錠(ニトロフィックス5/10)
カリアント錠10(ニトロペン錠)
カリアントTPカプセル(ニトロラム)
冠動注用ミリスロール0.5mg/10ml(ニプラノール点眼液)
コバインター錠5mg(ハイパジールコーワ錠3/錠6)
コンスピット錠(ハイパジールコーワ点眼液)
サークレス注0.05%/0.1%(バソレーターRB2.5)
サワドールL錠(バソレーター注5mg/注50mg)
サワドールテープ/S(バソレーターテープ)
ジアセラL錠(バソレーター軟膏)
シグマート錠2.5mg/5mg(フランドル)
シグマート注2mg/12mg/48mg(フランソルテープS)
シグランコート錠2.5mg/5mg(ペネティISDNテープ)
ジドレンテープ(ヘルツァーS)
シベラント錠5mg(ヘルピニン-Rカプセル)
シルビノール錠5mg(ホクスノールLカプセル)
硝酸イソソルビド錠[ツルハラ](ミオコールスプレー)
硝酸イソソルビドテープ[EMEC](ミニトロテープ)
ステンベルガー錠5mg(ミリステープ)
スレンドミン錠(ミリスロール注)
セラモンテ錠(ミリスロールテープ)
ソプレロール錠20mg(メズサビド錠5)
タイシロール錠20mg(メディトランステープ)
ニコランジス錠2.5mg/5mg(メディトランスニトロ)
ニコランタ錠5(ラブノールRカプセル)
ニコランマート錠(リファタックL錠)
ニトソルビド注0.05%/0.1(リファタックテープS)
ニトプロ注(リベラステープ)
また慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療薬であるアデムパス錠との併用も異常な低血圧を招く恐れがあるので、シアリスを服用してはいけません。

シアリスの保管については特に神経質になる必要が無く、直射日光が当たらず湿気の少ない室内での常温保存で十分です。
シアリスの有効期限は2年間です。
シートに入ったままの物でも、シートから取り出してピルケースなどで保存する場合でも有効期限に特に変わりはありません。
ピルケースなどに保存する場合で、容器内の空間が多い場合は破損防止のためにビニールやティッシュペーパーなどを詰めておくと良いでしょう。
注意しなければいけないのは、シアリスを半分に割って使用する場合です。
薬通販などで掲載されている10mgと20mgの価格差が小さいために、20mg錠をピルカッターなどで半分に割って使用する人も多いと思います。
割った部分は表面のようにオレンジ色のコーティングがない白い状態ですが、この部分から湿気を吸いやすくなるために使用期限が短くなると考えてください。
割った錠剤を保存する場合はラップなどで密封するように包み、ピルケースなどに入れて保存してください。
ただし割った錠剤については1〜2週間以内で使用することが望ましいです。

シアリスの効果を実感できるようになる時間は人によって幅がありますが、服用後おおむね3〜4時間ですので、性交の3時間前にくらいに服用してください。
シアリスは有効成分であるタダラフィルの含有量によって、効果が認められる時間が異なります。
10mgで24時間、20mgで36時間くらいです。
またシアリスを服用出来ない人もいます。
シアリス(タダラフィル)を服用してアレルギーを起こしたことがある人。
心筋梗塞や動脈硬化など心血管に問題があり、性行為を行うこと自体に問題がある人。
不安定狭心症があるか、今までに性行中に狭心症を起こしたことがある人。
3ヶ月以内に心筋梗塞を起こした。
6ヶ月以内に脳梗塞・脳出血を起こした。
不整脈の人。
重度の肝障害がある人。
血圧の上が90mmHg未満または下が50mmH未満の低血圧の人。
血圧の上が170mmhg以上または下が100mmHg以上の高血圧の人。
網膜色素変性症(進行性の夜盲・とり目)の人。
以上に当てはまる人はシアリスを使用できません。
またシアリスは世界的に人気のED治療薬ですから、偽薬も多数が出回っています。
偽薬には有効成分のタダラフィルが含まれていなかったり、含まれていても少量だったりするばかりでなく、人体に悪影響を及ぼす物質が含まれている可能性があります。
国内においては医療機関で処方される薬が最も安全であると言えますが、経済的な面などで個人輸入によって入手する人も多いと思います。
その場合においては、信頼がおける個人輸入代行業者を利用するなどの注意が必要です。

シアリスの有効成分であるタダラフィルは、肺動脈性肺高血圧症や前立腺肥大に伴う排尿障害改善薬に使用されるなど、応用範囲が広い薬です。
様々な治療に用いられる安全性を持ち合わせた薬だと言うことができます。
但し服用は1日1回で、他のED治療薬を含む24時間以内での服用は避けなければいけません。
また規定量以上の服用は急激な血圧低下など、生命の危機にかかわる危険性を招きますので厳禁です。
他のED治療薬より併用禁忌薬は少ないのですが、硝酸薬などと併用すると血圧の急激な低下を招きますので、必ず禁忌薬の規定はお守りください。
国内外において様々な臨床試験が行われ、国内の臨床試験データによると257の症例中70例で副作用があった(27.2%)
副作用の内訳は頭痛が29例、顔の赤みが13例、顔のほてりが9例、消化不良が6例で、その他に鼻づまりなどがあったがいずれも軽微なもので、薬の効果が半減する頃には快方に向かっています。
シアリスは使用上の注意書きに沿った使い方をすれば、軽い副作用は出るものの安全に使用できるED薬だということができます。